今回は前回コラムに引き続き、事業再生型M&Aの事例シリーズで「破算+事業譲渡の稀有な例」を紹介いたします。
今回はこの旅館のその後をご紹介させていただきます。
前回までのおさらい
第1~3章にわたり、この案件の経緯と再建型事業譲渡(広義のM&A)の実施までを説明してきました。
さて、本章ではこの旅館がその後どうなったかについて説明して、シリーズを終えようと思います。
結論から申しますと、ここ十年以上にわたって売り上げ減少の歯止めが利かず、赤字を続けて瀕死の状態に陥っていた旅館がスポンサーが変わった途端、3か月で黒字転換し、その後大幅なリニューアルをした結果、売上は大幅アップ、完全な黒字経営に切り替わりました。
この内容の時系列のポイントを以下に列記してみたいと思います。
売上大幅アップ・黒字転換の5つのポイント
①人件費の見直し
まず、新経営者が行ったのは、人件費をはじめとする経費の見直しです。
誰も首は切らない代わりに、今までの顧客の入り具合を分析し、顧客の対応に最低限必要なオペレーションをするための周到なシフトを組み直しました。
これにより人件費がかなり効率的に削減いたしました。
②仕入れ先チェック
次に仕入れ先のチェックです。
特に食材等の仕入れにおいては、現場の料理人に任せきりになっていたのですが、これを入念にチェックした結果、一部の仕入れ先との癒着などが発覚しました。
結果として板長は解雇となり、急遽別な人材に入れ替えたため、仕入れ比率は大幅に減少しました。
やはり細かいところまで経営陣が目を通していないと、思わぬ落とし穴があるといういい例ですね。
③顧客満足に必要な経費の見直し
その他の経費も宿泊客にとって本当に必要かどうかの目線で厳しくチェックしていきました。
ここで大事なのは、顧客にとっていいサービスの提供のためには、むしろ増やす経費もあったということです。
例えば、電気代の節約のために顧客が泊まっていない部分は極力電気を消していたのですが、これでは薄気味悪いですよね。
たとえ顧客が少なくとも、全館明るい状態でないと、いい気分でお客様を迎えられません。
また、折角の老舗旅館ですから、アメニティもちゃんとしたものでないと気分が台無しです。
こういったものは無理にケチらず使わせました。
④顧客への営業
ほぼ旅行代理店に頼っていた顧客営業も、独自にHPやDMで集客も強化していましたが、こちらの売り上げ増は、効果がでるまでに時間がかかります。
しかし、上記の経費削減を行った結果、3か月目から黒字転換し、今までの出血が止まったのです。
⑤旅館のリニューアル
最後は先に申したとおり、本当に顧客を呼べる旅館に生まれ変われるための大幅リニューアルです。
これは新経営者のノウハウをうまく活かし、この会社の持ち味である老舗旅館の風情を残しつつ、現在のお客様に合わせた大幅な改装を行い、ここから売り上げは大幅にアップ。
黒字幅も順調に増加し、今に至るという訳です。
まとめ
老朽化して時代に合わなくなり、売上が減少、赤字続きの旅館。そんな旅館を回復させたポイントはお金をかけた大改装だと思うのではないでしょうか。
ところが、新経営者がまずやったのが、役員を一人送り込み、今の状態で出血を止める作業でした。
旧経営陣が「逆さに振っても鼻血もでないくらい経費は絞り込んでいます」と言っていたのに、瞬く間にそれを効率化し、僅か3か月で黒字転持っていくいくというこの手腕。
我々も一緒に関わらせていただき、やはり企業は「トップ次第」だなと改めて感じた瞬間でした。
これで事業再生型M&Aシリーズは終わりです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
我々みどり合同税理士法人グループでは、主に中国・四国地方や、東京をはじめ関東を中心にM&A、事業再生コンサルティング等を永年展開しております。
税務・会計、経営コンサルティング、M&A等、様々な専門家のコラボレーションにより、多面的な経営のお悩み事にお答えさせて頂いております。
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