コラム譲渡企業様(譲渡オーナー様)向け

M&A前に一部の株を譲渡する!?注意すべきポイントをご案内します

投稿日:2023年6月16日 最終更新日:

株式会社は、日本で一番多く存在する会社形態です。
国税庁の令和4年度「会社標本調査」によると、株式会社の単体法人数は2,691,378社となっており、全体の92.4%を占めています。

出資者(株主)によって構成される株主総会は、会社の経営方針を決定する重要事項の決定権を持つため、株主が「誰か?誰になるのか?」ということは、経営上非常に重要な問題です。

弊社がお手伝いさせて頂いているM&Aでは、株式の100%譲渡が前提条件となることがほとんどです。

ただ、M&Aで100%株式を譲渡することは重要な判断です。
そのため、最近ではオーナー様がM&A前に将来を見据えてお互いを知るために、一部の株式を候補先に譲渡されることを検討される機会が増えています。

今回のコラムでは、最終的なM&A前に株式の一部を第三者に譲渡される際に注意頂きたいポイントをご案内させて頂きます。

株式の議決権比率と主な権利について
議決権比率 主な権利
2/3以上 ‣定款変更決議等の特別決議の成立
‣持株割合の変化に関わる事項(新株、転換社債等の有利発行)
‣会社の内容の変化に関わる重要事項
 (減資、合併、定款変更、 営業譲渡、事業の重要な一部の譲渡、
  解散、株式交換、株式移転
など
支配権
1/2超 ‣経営権の獲得
‣取締役・監査役の株主総会での選任決議
‣取締役・監査役の報酬額の株主総会決議
‣計算書類の株主総会承認
‣取締役・監査役解任権
経営権
1/3超
‣重要事項の特別決議の阻止(拒否権発動)
10%以上
‣解散請求権
3%以上を6ヶ月間
‣株主総会招集請求権
‣取締役・監査役の解任請求権
‣整理申立権
3%以上
‣会社帳簿の閲覧謄写請求権
‣会社及び子会社の業務及び財産状況調査のための検査役選任請求権
1株以上
‣書面による事前質問権
‣株主代表訴訟提起権(6カ月以上保有継続要)
‣各種書類の閲覧・謄写請求権
議決権比率 主な権利
2/3以上 ‣定款変更決議等の特別決議の成立
‣持株割合の変化に関わる事項(新株、転換社債等の有利発行)
‣会社の内容の変化に関わる重要事項
 (減資、合併、定款変更、 営業譲渡、事業の重要な一部の譲渡、
  解散、株式交換、株式移転
など
支配権
1/2超 ‣経営権の獲得
‣取締役・監査役の株主総会での選任決議
‣取締役・監査役の報酬額の株主総会決議
‣計算書類の株主総会承認
‣取締役・監査役解任権
経営権
1/3超
‣重要事項の特別決議の阻止(拒否権発動)
10%以上
‣解散請求権
3%以上を6ヶ月間
‣株主総会招集請求権
‣取締役・監査役の解任請求権
‣整理申立権
3%以上
‣会社帳簿の閲覧謄写請求権
‣会社及び子会社の業務及び財産状況調査のための検査役選任請求権
1株以上
‣書面による事前質問権
‣株主代表訴訟提起権(6カ月以上保有継続要)
‣各種書類の閲覧・謄写請求権

上記表のとおり議決権比率を51%以上保有した場合は、取締役を選任することができますので、株主は「経営権」を取得することが出来ます。

また、議決権比率を66.7%以上保有した場合は、会社の変化に関わる重要事項を「特別決議」によって決定することができますので、「支配権」を有しています。
そのため、安定的な会社経営を行う上では、オーナー一族が66.7%以上を保有する必要があります。

それでは、M&Aを決定される前の段階で、第三者に拒否権がない比率(33.3%)の株式を第三者に譲渡しても問題がないのでしょうか。

譲渡に際して、注意すべきポイントを考えていきたいと思います。

M&A前に外部へ株式を譲渡する上で注意すべきポイント
①将来において株式の買戻しが可能かどうか

株式は基本的に強制的な買取を行うことが出来ません。

株を譲渡した時点では双方が友好的であったとしても、将来において関係性が保証されることがないため、譲渡側が株式の買戻しをしたくともできないケースが想定されます。

実際に譲渡時の倍の価格で株式を買取せざるを得なかったケースもあるため、注意が必要です。

②株式等売渡請求を用いたスクイーズアウトができるかどうか

スクイーズアウトとは、支配株主が少数株主の個別同意を得ることなく、少数株主の保有する全ての株式を取得することをいいます。

ただし、実行できる要件は非常に厳しく、対象企業の総株主の議決権を10分の9以上有していることが必要です。

1人の株主が90%以上の議決権を有していることは多くないため、株主構成に事前に目を配る必要があります。

まとめ

いかがでしょうか。
一部の株式を譲渡される前に必ず、注意すべきポイントがあります。

もし、一部の株式を譲渡されることを検討されているようでしたら、信頼できるM&Aアドバイザーに相談して下さい。

皆様の成功するM&Aを実現するために、弊社は尽力いたします。

この記事の執筆者

新川 功雄(取締役副社長/M&Aシニアエキスパート)

早稲田大学卒。大手サービス会社、マーケティング会社、外資系企業に勤務。赤字債務超過の中小企業を経営し、黒字企業に立て直した後、自身の会社を事業譲渡して、2016年から現職。首都圏への進出、上場企業のM&A支援等を経験。

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