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建設業M&Aの現況と重要チェックポイント【業種別M&A】

投稿日:2022年3月14日 最終更新日:

M&Aが拡大している昨今、様々な業種のM&Aがさかんに行われています。
ただ、業種によってそれぞれチェックすべきポイントが異なります。

M&Aの当事者として、M&Aを成功させるためには、業種毎にチェックすべきポイントを事前に踏まえておかなければなりません。

今回のコラムでは、建設業M&Aに絞った、現況とチェックポイントをご紹介させて頂きます。

 

建設業M&Aの現況=建設業M&Aが多い理由

①経営者の高齢化
国土交通省のデータによると、建設業就業者は、55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と他業種と比較しても高齢化が進行し、事業承継が大きな課題となっています。

②技術力のある有資格者の確保が急務
総務省がまとめた2021年の労働力調査(基本集計)の平均結果によると、建設業の就業者数は482万人で、ピーク時の685万人から30%減となっています。
そのため、有資格者、労働者の確保が事業者に求められています。

③隣接業種への進出
市場ニーズの拡大により、「総合建設業」と「職別工事業」の垣根を越えて将来を見据えて隣接業種へ進出するM&Aが広がっています。

建設業界では事業承継型M&Aのみならず、人材確保、隣接業種への進出、エリア拡大を目指してM&Aがさかんに行われています。

建設業M&Aの重要チェックポイント

①「工事経歴書」と「経審(経営審査)」

⇒工事経歴書は1年間に行った工事内容を報告する書類です。
また、経営審査とは公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査になります。

会社の規模や業績、過去の工事の実績などに応じて、企業をスコア(点数)で表したものです。

ここをチェック!!

〇企業が得意としている工事の中身
工事の割合(土木と建築等、民間と公共の割合)や、受注体制(元請けか下請けか)を把握することで、自社事業と相乗効果を生み出しやすいかどうかが把握できます。

〇譲渡後の経審スコア
工事実績を持った建設会社をM&Aで譲り受ける際に、株価を抑えるため、現経営者が退職金を取得して、株価を抑えたM&Aを行うケースがあります。
その際、入札に必要なランクを譲渡後も保持できるかどうか事前に把握する必要があります。

②粉飾決算

⇒経審のスコアを保持し、公共工事の入札に勝つために、粉飾決算をしている場合があります。
建設業界においては、粉飾決算を行っていないかどうかの見極めが必要です。

ここをチェック!!

〇外注費用の適正さ
建設業は、自社で対応しきれない工事について、必ず外注を行っています。
過去のM&A案件の事例で、オーナーが営業権を高く設定するために、外注先に譲渡前は外注コストを低くして欲しいと依頼し、株価を高く見せかけていたケースがあります。
過去の外注費用や比率を確認し、上記のようなことがないか確認して下さい。

〇未成工事支出金の計上
未成工事支出金は、費用の繰延べに使う勘定科目です。
利益を大きく見せるために、工事が完了しても資産に計上したまま費用化しないという手法を行っているケースがあります。
譲渡企業の決算書で、未成工事支出金が不正に多くないか、必ず確認して下さい。

③談合とリベート

⇒地方では都会と異なり、談合やリベートの風習が残っている場合があります。
談合の有無やリベートの有無は、必ずチェックすべきポイントです。

ここをチェック!!

エリアを拡大するM&Aの場合、譲渡後に期待された入札が取れない可能性があります。
オーナーに談合の仕組みやリベートの有無、協会加入の目的等を詳しくヒアリングして下さい。

④経営管理責任者

⇒経営業務管理責任者(経管といわれます)は、建設業の許可を受けようとする会社または個人事業主の中で、経営業務を行う責任者のことを言います。
建設業において一定の経営経験がなければ、経営業務管理責任者になることはできません。

【経営管理の要件】(1と2を満たす必要有。)
(1) 常勤性:他事業者の役員や従業員にはなれない
(2) 建設業の一定年数の経営経験:建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者等
※令和2年10月1日に上記より要件緩和されています。
詳しくは行政書士に要件内容を確認して下さい。

ここをチェック!!

〇譲渡後の役員構成
自社に経営管理責任者となりえる適任者がいない場合、譲渡企業に要件を満たす方がいるかどうか、外部から採用できるかどうか、必ず確認して下さい。

いかがでしょうか。

建設業のM&Aは、必ずチェックすべきポイントがあります。
建設業界に精通していて、信頼できる事業承継・M&Aアドバイザーに相談して下さい。

皆様の成功するM&Aを実現するために、弊社も尽力しています。

この記事の執筆者

新川 功雄(取締役副社長/M&Aシニアエキスパート)

早稲田大学卒。大手サービス会社、マーケティング会社、外資系企業に勤務。赤字債務超過の中小企業を経営し、黒字企業に立て直した後、自身の会社を事業譲渡して、2016年から現職。首都圏への進出、上場企業のM&A支援等を経験。

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