2019年末頃から日本国内でも新型コロナウイルス感染症の流行が拡大し、1年超が経過しました。
コロナウイルスとの付き合い方にも慣れたというか、共存しているというか、新たな生活様式への変化はあるものの、一時期のパニック的な状況からは脱しつつあるように感じます。
今回のコラムでは、コロナ禍を経たM&A業界の現状と、アフターコロナ(ウィズコロナ!?)のM&A取引で買い手(譲受企業)が気を付けることを書きたいと思います。
コロナ禍を経たM&A業界の現状
最近、色々な方とお話をしている中で、「M&Aが増えているのでは?」とよく聞かれます。
確かに、売却したいという相談は増えました。
ただ、相談は増えたものの、案件(成約)が増えたかというとその限りではありません。
むしろ、私の場合ですと相談は増えましたが、案件(成約)は減っています。
コロナ禍によって業績が悪化した企業はかなり多いと思います。
いままでは会社売却など考えてもいなかった企業が、業績悪化によって先行き不安などを感じ、売却検討を開始したことで相談が増えているのでしょう。
ただ、全ての会社がすんなり売却できるかというとそうではありません。
買い手の立場で考えると、赤字の会社を高い値段で買うことはできませんし、立て直す自信がなければ買うことはできないでしょう。
コロナ禍を経て、いわゆる再生案件(赤字&債務超過など)や後継者不在案件は増えており、M&A業界全体で見ると動きは活発のようです。
ただし、売却希望案件が増えたとは言え、優良な案件だけが増えたわけではなく、コロナ禍の影響を受けた業績の悪い案件もかなり増えているようです。
弊社は、買収監査(デューデリジェンス:DD)やM&Aセカンド・オピニオンなどの買い手企業向けのサービスを行っていることから、弊社以外の他社からの持ち込み案件(売却希望案件)の相談も買い手企業から受けるのですが、コロナ前と比べて財務内容や業績が悪化した売却希望案件が増えています。
アフターコロナ(ウィズコロナ!?)のM&A取引で買い手(譲渡企業)が気を付けること
私が買い手であれば、以下の2点に特に気を付けます。
(1)売り手(譲渡企業)が事業を売却する理由
(2)コロナが売り手の業績に及ぼした(今後及ぼす)影響の分析
(1)は、売却検討の理由が「コロナによる業績悪化もしくは先行き不安」か「それ以外」に分けて考えます。
前者の場合は、コロナに起因していることが明白なので、コロナが売り手企業の業績にどう影響したか、また今後どう影響するかを(2)で分析します。
分析に際しては、3か年程度の月次損益推移を比較し、売上・原価・経費の各項目の大きな増減およびその原因を把握することで、譲受後の業績予想を行います。