コラム事業拡大人材確保・育成後継者問題譲渡企業様(譲渡オーナー様)向け

従業員への事業承継のメリット・デメリットと承継候補者の見極めポイント

投稿日:2025年6月2日 最終更新日:

事業承継には、親族内承継、M&A(第三者承継)、そして従業員承継の3つの選択肢があります。

従業員承継とは、企業の経営権を社内の幹部・従業員へ引き継ぐ方法です。
長年勤務し、業務内容を熟知している幹部・従業員に引き継ぐことで、企業文化を維持しながらスムーズな事業継続が期待できます。
親族外に経営権を引き継ぐことから、M&Aに近い承継形式と言われています。

しかし、候補者選定や資金調達などの課題も存在するため、慎重な判断が必要です。

また、日本の内需は減少傾向が持続し、高齢者は2040年に1,000万人増え、逆に労働生産人口は1,000万人減少することが予想されています。

今後を見据え日本の環境変化に対応できる幹部・従業員を選ぶ際、本コラムをご参考にしてください。

従業員承継のメリット

従業員承継には以下のようなメリットがあります。

事業の継続性が高い

従業員は自社の業務や企業文化をよく理解しており、円滑な引き継ぎが可能

取引先や顧客の
信頼を維持しやすい

従業員が新しい経営者になることで、取引先や顧客にとっても安心感が生まれ、関係の継続がしやすくなる

従業員の
モチベーション向上

企業の発展に貢献してきた従業員が経営権を持つことで、経営の意欲が高まり、組織全体の士気向上につながる

事業の継続性が高い

従業員は自社の業務や企業文化をよく理解しており、円滑な引き継ぎが可能

取引先や顧客の
信頼を維持しやすい

従業員が新しい経営者になることで、取引先や顧客にとっても安心感が生まれ、関係の継続がしやすくなる

従業員のモチベーション向上

企業の発展に貢献してきた従業員が経営権を持つことで、経営の意欲が高まり、組織全体の士気向上につながる

従業員承継のデメリット

一方で、従業員承継にはいくつかのデメリットもあります。

①資金調達の問題

従業員が会社を買い取る場合、十分な資金を確保できるかが課題となります。
特に中小企業では資金調達の難しさが障害になることがあります。

②経営と資本の分離

事業継続に必要な不動産が高額な場合など、現経営者が新しい経営者に事業を引き継いでもらいやすいように株式の譲渡スキームを検討する必要があります(例.会社分割など)。
そのスキームを実行するための検討・準備期間も必要です。

③経営スキルの不足

現場の業務に長けた従業員でも、経営に必要なスキルや知識が不足していることがあるため、経営者としての教育や研修が必要です。

④社内対立の可能性

承継者の選定過程で、他の従業員との間に軋轢が生じる可能性があります。
特に複数の候補者がいる場合は、公平なプロセスが求められるため、選ばれなかった方への適切な配慮・処遇が必要です。

⑤承継候補者の家族の反対

承継候補者である従業員が承諾しても、その従業員の家族が承継に反対する場合があります。
従業員の家族にもしっかりと丁寧な説明が必要です。

⑥経営環境の変化に対応しにくい

既存の従業員が経営者になることで、新しい視点や外部からのノウハウを取り入れにくくなることも考えられます。

承継候補者を見極める4つのポイント

従業員承継を成功させるためには、適切な承継候補者を選ぶことが重要です。
「経営者は企業全体に責任を持つ者」だからこそ、以下のポイントを踏まえて判断する必要があります。

point 1. ​未来に関わる意思決定ができるかどうか

徹底的に考え抜く性質、自燃性、情報収集力、積極性、利他の精神などを持って、「事業計画を策定し行動」できるかどうかが重要です。

point 2. 最も有効な資金の使い方ができるかどうか

マーケティング、営業、商品開発、サービス提供、人材採用/育成など、何にいくら使うか「資金計画を策定し、実行」できるかどうかが重要になります。

point 3. 家族の協力を得られるかどうか

社長一人では上手く経営できません。
サラリーマン時代と異なる働き方を家族(特に奥様)が許容できるかどうか、借入することに反対しないかどうかが重要です。

point 4. 自身に足りていないことを学ぶ姿勢があるかどうか

経営において知らないこと、分からないことをそのままにしておくとリスクにつながります。マネジメントや財務/税務など、承継候補者が今の自分に足りないものを学ぶ姿勢があるかどうかは非常に重要なポイントです。

まとめ

従業員承継は、事業の継続性や組織の安定性を確保しやすい反面、前述したような課題もあります。

従業員承継を成功させるためには、メリット・デメリットを十分に理解した上で、適切な承継候補者を見極めることが重要です。

事前に十分な準備を行い、計画的に進めることで、スムーズな事業承継を実現して頂きたいと思います。

この記事の執筆者

新川 功雄(取締役副社長/M&Aシニアエキスパート)

早稲田大学卒。大手サービス会社、マーケティング会社、外資系企業に勤務。赤字債務超過の中小企業を経営し、黒字企業に立て直した後、自身の会社を事業譲渡して、2016年から現職。首都圏への進出、上場企業のM&A支援等を経験。

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