M&Aの知識コラム後継者問題譲渡企業様(譲渡オーナー様)向け

税理士法人・会計事務所の事業承継・M&Aとは?後継者問題と解決策を徹底解説します

投稿日:2025年1月16日 最終更新日:

近年、税理士法人・会計事務所では業務の複雑化、DX(デジタル)対応、会計人材の採用が出来ないといった課題や、税理士の先生に代表されるトップ層の高齢化といった問題からM&Aによる事業承継の事例が急増しています。

実際にこの数年で弊社が地盤にしている中四国でも、事務所の大小を問わずM&Aによる統合が進んでいる状況です。

このコラムでは、税理士法人・会計事務所におけるM&Aのメリット・デメリットや、後継者問題を解決するための具体的な方法についてご案内いたします。

税理士法人・会計事務所における事業承継の現状

税理士事務所では後継者不足が深刻化しています。
一般的に事業承継は、家族や従業員に事業を引き継ぐ形が理想とされていますが、近年では以下の課題が浮き彫りになっています。

家族に引き継げる人材がいない

従業員が資格を
取得できない

若手税理士の
採用が困難

資格取得者である子息の事務所経営の方向性が違うため引き継げない

高齢化により新規採用ができず事務所経営が停滞

こうした背景から、廃業を選択される事務所が増える一方、事務所の資産や顧客基盤を有効活用できる方法としてM&Aが注目を集めています。

M&Aのメリット・デメリット

メリット

 1. 事業対価の取得

事業を売却することで対価となる収益を得ることができます。
一般的に事業対価の目安は年間顧問報酬と同額にされるケースが多いですが、その限りではありません。
負債額を考慮したり、営業利益(修正後)の3年~5年が目安となるケースも多くあります。

 2. クライアントへの影響が少ない

顧客基盤を維持したまま事業を引き継ぐことが可能です。

 3. 事務所のさらなる存続と発展

第三者である事務所と統合することでデジタル化が促進される、コンサルティング領域への進出が可能になる等、事務所の存続とさらなる発展を実現できる可能性が高くなります。

 4. 引き継ぎ期間が短い

ほとんどのケースで同業がM&Aで譲り受けを行うため、短期間でスムーズな承継が実現します。

デメリット

 1.買い手との調整が必要

事務所の方針や文化の違いによる課題が生じる可能性があります。
丁寧な従業員説明や仕組みの改善が必要です。

 2. 適切な買い手探しが難しい

買収側にとっても条件が合わないと取引が成立しません。
通常のM&Aと同様に数多くの候補先にアプローチする必要があります。

 3. コストが発生する

仲介手数料や契約書作成などに費用がかかります。

後継者問題を解決するための価値向上ステップ

後継者問題を解決するには、早期から準備を始めて事務所の価値を向上することが重要です。
以下は主なステップです。

1.現状分析とライフプラン設計

事務所の資産、収益、顧客リストなどを整理して事務所の課題を棚卸します。
また、ご自身がいつ引退したいのか、事務所をどのようにしていきたいのか、後継者候補が社内にいないのか等、実際にご自身のライフプランを作成します。

2.課題への対応

現状分析、ライフプランに基づき、各課題に優先順位をつけて対応します。
例えば、顧客の中で手書き伝票でのやり取りをされているケースの場合は、出来る限り電子化に移行するなど、しっかりと事前対応を行うことで事業価値を向上できます。

3.専門家の活用

M&Aや事業承継に強い税理士やアドバイザーに相談することで、リスク回避を行いながら買収候補先のアプローチ数を増やして事業対価の最大化を目指します。

M&A成功事例と注意点

成功事例

弊社グループの税理士法人では、跡継ぎがいない会計事務所様をM&Aで譲り受け、従業員の皆様と協力して運営を行っています。
クライアント基盤を維持したままスムーズな統合作業を現在も行っている最中です。元の代表者は顧問として現在も業務に携わって頂いています。

注意点

  • 情報漏洩に注意:M&A交渉の際、クライアント情報(企業規模、年間顧問料含む)が外部に漏れないようにする必要があります。
  • 契約条件を明確にする:買収後の業務体制や責任分担について、事前に詳細を決定する必要があります。特にこの部分はM&Aの専門家をしっかりと入れて、MECE(ミーシー)の概念で漏れがないように設定してください。
  • 買収後の対応:早すぎる運営方法の変更は相手方にとって一方的になりがちです。ゆっくりとシステムの変更を行う必要があります。

まとめ

いかがでしょうか。

税理士法人・会計事務所の事業承継は、後継者問題や人手不足、デジタル化という課題を抱えています。
その解決策としてM&Aは非常に有効な手段ですが、事前準備や専門家のサポートが不可欠です。
成功事例や注意点を参考に、ご自身の事務所に合った最適な方法を選んでください。

この記事の執筆者

新川 功雄(取締役副社長/M&Aシニアエキスパート)

早稲田大学卒。大手サービス会社、マーケティング会社、外資系企業に勤務。赤字債務超過の中小企業を経営し、黒字企業に立て直した後、自身の会社を事業譲渡して、2016年から現職。首都圏への進出、上場企業のM&A支援等を経験。

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