M&Aの増加にともないM&A後のトラブルが問題となる中、トラブル防止のために最終契約書と呼ばれる契約書の内容は非常に重要です。
最終契約書はM&Aの形態によって、
株式を譲渡する場合は「株式譲渡契約書」
事業を譲渡する場合は「事業譲渡契約書」
と呼ばれています。
譲渡側、買収側の双方にとって非常に重要な契約書ですが、一般的に1当事者が複数回契約を行うことは少ないため、内容をよく理解しないまま締結してしまうとM&A成立後にトラブルの可能性があります。
今回のコラムでは契約書の落とし穴にはまらないため、最終契約書(株式譲渡契約書)に必要な内容とそのポイントをご案内します。
株式譲渡契約書に必要な5つの内容とポイント
① 契約の当事者
① 契約の当事者
契約の当事者とは、契約を結ぶことによって権利や義務が発生する人のことを言います。
そのためほとんどのケースで「株主全員」と株式譲渡契約書を締結する必要があります。
契約の当事者とは、契約を結ぶことによって権利や義務が発生する人のことを言います。
そのためほとんどのケースで「株主全員」と株式譲渡契約書を締結する必要があります。
<ポイント>
・「株主本人が契約を行う(自筆自書)」が必要
・株主が認知症等で意志判断能力に欠けている場合は契約が無効と判断される可能性がある
契約が無効と判断されるリスクがある場合は、成年後見制度の申立てを行う必要がありますので十分に注意して下さい。
また、株主の方が逝去されるなど相続が発生した場合、相続人の中で遺産分割協議書を株式に限定してM&A前に行う対応などが必要なケースがあります。
② 譲渡の前提条件
② 譲渡の前提条件
譲渡にあたって株式譲渡のための前提条件を記載することがあります。
例えば、以下のような条件です。
- 株券発行会社を不発行会社にする
- 土地/建物の貸主より譲渡後の賃貸を継続することをM&A前に認めてもらう
- 重要な取引先に取引継続を事前に約束してもらう
譲渡にあたって株式譲渡のための前提条件を記載することがあります。
例えば、以下のような条件です。
- 株券発行会社を不発行会社にする
- 土地/建物の貸主より譲渡後の賃貸を継続することをM&A前に認めてもらう
- 重要な取引先に取引継続を事前に約束してもらう
<ポイント>
・譲渡前に現オーナーが対処すべき課題はしっかりと実行してもらう
・譲渡後に必要と考えられる関係者の同意をもれなく取得する
といった点が重要です。譲渡後にトラブルが発生しないよう注意して下さい。
③ 表明保証条項
③ 表明保証条項
表明保証条項とは「契約当事者が株式譲渡契約書の締結日や譲渡日において、契約当事者自身または対象会社に関する法務、税務、財務、労務、環境、知的財産、事業内容等に関する一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その表明した内容を保証すること」を言います。
具体的には以下のような内容です。
内容 | 確認ポイント |
---|---|
譲渡株式の所有と担保権等の不存在 |
売主が株式を所有していること
|
法令等違反の不存在 |
法令違反を行っていないこと |
成年後見開始等の不存在 |
意志判断能力を有していること |
財務諸表の適正、偶発債務の不存在 |
改竄を行ったり偶発債務がないこと |
労務問題、労働債務の不存在 |
労務、労災関連や未払残業代がないこと |
訴訟等の不存在 |
訴訟が発生していないこと |
<ポイント>
リスクの可能性がある内容がしっかりと記載されているかどうか、
または保証できない問題があった場合にその旨が明記されているかどうかがポイントです。
表明保証条項は譲渡側で20~30項目、譲受側で5項目~10項目に及びます。
漏れがないかしっかりと内容をご確認下さい。
④ 損害の賠償又は補償
④ 損害の賠償又は補償
M&A後に問題が起きてしまった場合のために損害の賠償または補償について
契約書に明記します。
<ポイント>
ポイントは「金額の上限」、「賠償又は補償の期間」です。
「金額の上限」は「のれん代を最大」
「賠償又は補償の期間」は「1年~2年」
を設定することが多くなっていますのでしっかりとご検討下さい。
⑤ 競業避止
⑤ 競業避止
譲渡後に売主が競業を行わないように競業避止の条文を入れることが重要です。
<ポイント>
例えば、競業避止期間を3年以上にするなど長めに設定をすることで、M&A後のトラブルを防ぐことができます。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は株式譲渡契約書に必要な内容とそのポイントについてご案内しました。
もし、契約書の内容にお悩みの際はお声掛け頂けますと幸いです。
セカンドオピニオン対応も弊社で行っています。
皆様のM&Aが成功するよう弊社も尽力しています。
この記事の執筆者
新川 功雄(取締役副社長/M&Aシニアエキスパート)
早稲田大学卒。大手サービス会社、マーケティング会社、外資系企業に勤務。赤字債務超過の中小企業を経営し、黒字企業に立て直した後、自身の会社を事業譲渡して、2016年から現職。首都圏への進出、上場企業のM&A支援等を経験。
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