M&Aの知識コラム譲渡企業様(譲渡オーナー様)向け

M&Aガイドラインの大幅リニューアルでM&A業界が大きく変わる!?改定ポイントを徹底解説します

投稿日:2024年9月25日 最終更新日:

2024年8月30日に経済産業省がM&Aガイドラインを改定しました。

https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830002/20240830002.html

これまでのコラムに書かせて頂いたような「M&A詐欺や過剰な営業・広告」を防ぐために、今回の改訂(第3版)は大幅な変更が行われています。

今回のコラムでは主な改訂ポイント7点と業界がどう変わるのか分かりやすくご案内いたします。

改定内容① 仲介者・FA(フィナンシャル・アドバイザー)の手数料・提供業務に関する事項

改定内容① 仲介者・FA(フィナンシャル・アドバイザー)の手数料・提供業務に関する事項

M&Aアドバイザー会社に、手数料の詳細説明、プロセスごとの提供業務の
具体的説明、担当者の保有資格や経験年数・成約実績の説明等を求めています。

<ここがポイント/業界はこう変わる>
M&A会社が仲介を行う場合、重要事項説明の中で「売手/買手双方に手数料を開示すること」が定められています。
そのため、定めた料金表を逸脱して双方から手数料を取得することができなくなりました。

業界では今後、「優先マッチング等」と称してM&A会社が買手から余分に手数料を取得し、売手の譲渡価額を不正に減額するような行為ができなくなります。

また、M&A担当アドバイザーの「質が強く求められる」ことになります。
特に経験年数、成約実績は重要ですので説明がなければアドバイザーに説明を求めて下さい。

改定内容② 広告・営業の禁止事項の明記

改定内容② 広告・営業の禁止事項の明記

M&Aアドバイザー会社に、広告・営業先が希望しない場合の広告・営業の
停止等を求めています。

<ここがポイント/業界はこう変わる>
これまでは売手に対して、買手がいないにも関わらずアプローチしているような状況が横行していましたが、今後はそのような不正は実施しづらくなります。

また、アプローチされた側がNOと言えば、今後M&A会社は営業を行えません。当事者が明確な意思を持って拒絶することが重要です。

改定内容③ 利益相反に係る禁止事項の具体

改定内容③ 利益相反に係る禁止事項の具体化

仲介契約を行う場合、仲介者の義務として以下のような行為が禁止されています。

  1. 譲り受け側から追加で手数料を取得し、当該譲り受け側に便宜を図る行為
    (当事者のニーズに反したマッチングの優先的実施又は不当に低額な譲渡価額への誘導等)
  2. リピーターとなる依頼者を優遇し、当該依頼者に便宜を図る行為
    (当事者のニーズに反したマッチングの優先的実施又は不当に低額な譲渡価額への誘導等)
  3. 売手側(買手側)の希望した譲渡額よりも高い(低い)譲渡額で M&A が成立した 場合、売手側(買手側)に対し、正規の手数料とは別に、希望した譲渡額と成立した譲渡額の差分の一定割合を報酬として要求する行為
  4. 一方当事者から伝達を求められた事項を他方当事者に対して伝達せず、又は一方当事者が実際には告げていない事項を偽って他方当事者に対して伝達する行為
  5. 一方当事者にとってのみ有利又は不利な情報を認識した場合に、当該情報を当該当事者に対して伝達せず、秘匿する行為

<ここがポイント/業界はこう変わる>
定めた料金表を逸脱して不正に当事者から報酬を取得していたM&Aアドバイザー会社は今後、一切そのような行為ができなくなります。

仲介契約書に上記5点が記載されていない場合、契約しないもしくはガイドラインに違反している旨をM&Aアドバイザー会社にお話し頂きたいと思います。

改定内容④ ネームクリア・テール条項に関する規律

改定内容④ ネームクリア・テール条項に関する規律

売手側の名称について買手側への開示(ネームクリア)前の売手側の同意の取得を求めています。

<ここがポイント/業界はこう変わる>
私は当たり前のことと考えていましたが、売手オーナーの許諾がなければ今後、M&Aアドバイザー会社は買手先に提案ができなくなります。

売手オーナーにあらかじめ許可を得ることで、秘密保持の漏洩リスクを極力抑える効果が見込まれると感じています。

改定内容⑤ 最終契約後の当事者間のリスク事項について

改定内容⑤ 最終契約後の当事者間のリスク事項について

最終契約前に当事者間でのトラブルとなりうるリスク事項をM&Aアドバイザー会社が具体的に説明するように求めています。

<ここがポイント/業界はこう変わる>
リスク事項の説明内容は本来M&Aアドバイザー会社が当たり前のこととして説明すべき内容となっています。具体的には以下です。

最終契約におけるリスク事項一覧
(1)経営者保証の扱いについて
(2)デュー・ディリジェンス(DD)の非実施
(3)表明保証の内容
(4)クロージング後の支払・手続き
(5)最終契約後の状況に応じた支払いの変動
(6)譲り渡し側の資産・貸付金の最終契約後整理
(7)最終契約からクロージングまでの期間について

今後、M&A業界では上記について説明する必要があるため、当事者が不理解なまま契約を締結させることはできなくなります。

最終契約前に「リスク事項について案内」がない場合は最終契約を結ばないようにして下さい。

改定内容⑥ 売手側の経営者保証の扱いについて

改定内容⑥ 売手側の経営者保証の扱いについて

経営者保証が解除、移行されるように適切な調整、検討を行うことがM&Aアドバイザー会社に求められています。

<ここがポイント/業界はこう変わる>
M&Aの成立後は当然のことながら売手側の借入金や保証債務は買手側が引き継ぐ、もしくは支払うことが求められます。
今後、その旨が担保されない最終契約を安易に結ぶことは難しくなると想定されます。

弊社では必ず契約書上に経営者保証について変更する+変更できなければ罰則がある旨を最終契約書上で定めています。

契約書内容に疑問をお持ちになられましたら身近のM&A専門家もしくは弁護士の方に御相談下さい。

改定内容⑦ 不適切な事業者の排除について

改定内容⑦ 不適切な事業者の排除について

買手企業に対する調査の実施、また不良な買手企業/個人のネットワークを構築することが求められています。

<ここがポイント/業界はこう変わる>
一般の与信情報と同様に今後は買手の事前調査、不良な相手先の情報共有ネットワークが構築されます。
例えば、弊社ではM&A仲介協会に加盟して情報共有を行う仕組みを構築しています。

今後、M&A業界が大きく変わります。
ぜひしっかりとしたM&Aを行って頂いて皆様が成功することを願っています。

この記事の執筆者

新川 功雄(取締役副社長/M&Aシニアエキスパート)

早稲田大学卒。大手サービス会社、マーケティング会社、外資系企業に勤務。赤字債務超過の中小企業を経営し、黒字企業に立て直した後、自身の会社を事業譲渡して、2016年から現職。首都圏への進出、上場企業のM&A支援等を経験。

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